最近「生成AI」という言葉をよく見かけるようになりました。ChatGPTのようなサービスが登場して、スマートフォンやパソコンで誰でも手軽に使えるようになったことで、生成AIは一気に身近な存在になりました。テレビのニュース、SNS、動画配信サービスなど、さまざまなメディアで取り上げられ、注目を集めています。学校の授業でも、情報の授業や探究学習のテーマとして扱われることが増えてきました。
この記事では、生成AIの基本的な仕組みや活用例、便利なところや注意すべき点、そして将来どんなふうに進化していくかについて、わかりやすく紹介していきます。
生成AIとは?ふつうのAIとどう違うの?
生成AIは、文章、画像、音声、動画などの新しいコンテンツを自動で作り出すことができる人工知能です。たとえば「猫の絵を描いて」と言えば、猫のイラストを描いてくれたり、「元気が出る一言を作って」と言えば励ましの言葉を生成してくれます。
これまでのAI、いわゆる「識別型AI」は、決まったデータをもとに分類したり予測したりするのが得意です。たとえば「これは犬ですか猫ですか」と判断するようなタスクに使われてきました。それに対して生成AIは、学習した情報をもとにまったく新しいものを「創る」ことができるのが特徴です。
つまり、識別型AIが「すでにあるものを判断する」のに対し、生成AIは「まだないものを生み出す」ことができる、という点が大きな違いです。このことから、生成AIは「創造型AI」とも呼ばれるようになっています。人間の発想力や表現力をサポートする、新しいパートナーのような存在です。
生成AIのしくみ
生成AIの心臓部には、「ディープラーニング(深層学習)」という技術があります。これは、大量のデータからパターンやルールを学び、それをもとに新しいデータを作り出す技術です。
たとえば、膨大な数の文章を読んだAIは、文章の構成や言葉の使い方、言葉のつながり方などを学習します。そして、新しい文章を書くときは、それらの学びを活かして、自然な文を作ることができます。
生成AIを支えている代表的な技術には、以下のようなものがあります:
- GAN(敵対的生成ネットワーク):2つのAI(1つは画像を作るAI、もう1つはそれが本物かどうかを判定するAI)が競い合いながら学習を進める仕組みです。この対抗関係によって、AIは本物そっくりの画像を作る能力を高めていきます。GANは顔写真や風景画像など、非常にリアルな画像生成に使われています。
- VAE(変分オートエンコーダー):データの特徴をうまく表現して、それに似た新しいデータを作ることが得意です。手書き文字や医療画像の再構成などに応用されています。
- 拡散モデル:最初はノイズだらけの画像からスタートし、少しずつノイズを減らしていくことで、きれいな画像を生成する方法です。DALL-EやMidjourneyのような画像生成AIが使っています。
- Transformer(トランスフォーマー):言葉同士の関係性に注目する「自己注意機構」というしくみを使って、長い文章でも文脈を理解し、自然で意味の通った文章を作ることができます。ChatGPTなどのAIチャットに使われています。
これらの技術が組み合わさることで、私たちが使っている生成AIは高い性能を持ち、さまざまな用途に対応できるようになっているのです。
生成AIが大きく進化したポイント
生成AIの技術は長年研究されてきましたが、ここ10年ほどで大きく進化しました。その中でも、いくつかの重要な転機があります。
- 2014年:GAN(敵対的生成ネットワーク)が登場。これにより、画像のリアルさが格段に向上しました。
- 2017年:Transformerが開発され、自然言語処理(文章の理解と生成)が飛躍的に進歩しました。これが後のGPTシリーズの土台になります。
- 2022年:ChatGPTが一般公開され、多くの人が実際に生成AIを使うようになり、大きな話題を呼びました。
これらの技術革新により、生成AIは研究の世界から私たちの生活の中へと一気に広がっていきました。特別な知識や高性能なパソコンがなくても、スマホ1台でAIに質問したり、アイデアをもらったりできる時代になったのです。
生成AIはどこで使われているの?
現在、生成AIはさまざまな分野で活用されています。
- 文章作成:ブログ記事、SNSの投稿、商品の紹介文、学習プリントや小説の執筆補助など
- 画像作成:イラスト、漫画の背景、ポスター、ゲーム用キャラクターなどの作成
- 音声・動画作成:ナレーション作成、歌声の合成、映像の編集や字幕作成など
- 教育・建築・広告:わかりやすい教材の作成、建築物のデザイン案、広告バナーの自動作成など
最近注目されているのが「マルチモーダルAI」です。これは文章・画像・音声・動画など、異なる形式の情報を一度に扱えるAIです。たとえば、「この文章に合ったイメージ画像を作って」といった指示に応じて、AIが画像を生成してくれるなど、より自由度の高い使い方ができるようになってきています。
生成AIの便利なところは?
生成AIには、たくさんのメリットがあります。
- 時間をかけずに文章や画像が作れる
- 見る人や使う人に合わせて内容を変えられる(パーソナライズ)
- アイデアが浮かばないときにヒントをもらえる
- 面倒な作業や繰り返しの作業を自動でやってくれる
- 専門的なスキルがなくても、プロっぽい作品が作れる
たとえば、プレゼン資料を作るときに、生成AIに図や説明文をお願いすると、短時間でわかりやすい資料ができあがります。さらに、英語学習の練習相手として会話をしてもらったり、読書感想文のアイデアを出してもらったりと、勉強のサポートにも役立ちます。
気をつけること
便利な生成AIですが、使い方を間違えるとトラブルにつながることもあります。
- 有料プランがあるものもあり、お金がかかる場合がある
- 個人情報を入力すると漏れるおそれがある
- AIが間違った情報をそれっぽく作ってしまうことがある(ハルシネーション)
- 他人の作品に似たものを作ってしまい、著作権の問題になることがある
- フェイクニュースや偽の音声・画像など、悪用される危険性もある
たとえば、AIが作った文章が正しそうに見えても、内容が間違っている場合があります。また、誰かが作ったイラストや音楽に似ているものをAIが生成し、それを勝手に使うとトラブルになるかもしれません。
だからこそ、AIが作ったものは必ず自分で確認し、内容が正しいか、他人のものをまねしていないかをチェックすることが大切です。
生成AIのこれから
生成AIは、これからもどんどん進化していきます。今後注目される動きとして、次のようなことが挙げられます。
- マルチモーダルAIの発展:文章、画像、音声、動画を組み合わせて扱えるAIがもっと広がります。
- ファインチューニング:特定の目的や企業向けにAIを細かく調整して活用する方法が注目されています。
- 法律やルールの整備:AIの安全で公正な利用を守るために、法整備やガイドラインが進んでいます。
- 社会の中での活用の広がり:教育、医療、福祉、ビジネスなど、あらゆる分野で生成AIが使われるようになっていきます。
たとえば、学校では生徒の学習進度に合わせて最適な教材をAIが提案したり、医療現場では患者に合わせた説明資料を作成したりと、個別対応や効率化が進むことが期待されています。
まとめ
生成AIは、人のように文章や画像、音声、動画などを作ることができるすごい技術です。学校の授業や日常生活、仕事の現場でもどんどん活用されるようになっています。
一方で、間違った情報の発信や著作権のトラブル、悪用のリスクもあるため、使うときには注意が必要です。大切なのは、AIを「便利な道具」として正しく使い、自分自身で考える力や判断する力を忘れないことです。
これからの社会では、AIとどう付き合っていくかがますます重要になります。生成AIを上手に活用して、自分の学びや可能性をさらに広げていきましょう。
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